3000m級の山々が連なり、湖や氷河、滝など雄大な自然が広がるカナディアンロッキー、日本と同じ環太平洋火山帯に属するため、温泉もあちこちに湧いています。カナダの温泉のほぼ9割がこの西側、ブリティッシュコロンビア州に集まっているのも、そういった地理的なものでしょう。 そんなカナディアンロッキーの南、クートニー国立公園の南端にラジウムホットスプリングはあります。厳しい岩山が連なる北部の風景とはまた少し違った、穏やかな湖と森が広がるクートニーエリアは、温泉の宝庫でもあり、他にもルシアー、アインスワース、フェアモント、ハルシオン、ナカスプ温泉など、気軽に楽しめる温泉が点在しています。 |
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1: 観光の拠点、山々に囲まれたバンフの街並み。きれいなダウンタウンには、 可愛らしいカフェやレストラン、お土産物屋などが並んでいて、ぶらり散歩も楽しめます。 2: ラジウムホットスプリングの入口前。 右手が日帰りスパ入口、左の丘の上にはホテルが建っています。 |
クートニーの数ある温泉の中、ラジウム温泉は英国人によって1841年に正式に発見された歴史ある温泉で(もちろんその前から原住民の人たちは利用していたようですが)、また、カナダ最大の温泉プールがあることで知られています。 1900年はじめには小さな浴場が作られ、1932年には政府がこの土地を買い取って、それ以来公共の浴場として運営されています。現在ある施設の大体は60年代に改築されたものだそう、広々とした公民館的な雰囲気の漂うシンプルな施設でした。 |
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3: カナダ最大といわれる大きな温泉プール、背後には崖がせまっています。 4: 清潔で広々した施設、脱衣所からプールまでの廊下の様子。 他のカナダの公共温泉同様、車椅子など対応可能な優しい造りになっています。 5: 一番温かい温泉ジャグジー脇にあった表示、40~44℃とほかほかです。 |
大きな平べったい建物の中には、大きなプールが2つ(温かい温泉プールと冷たくひやされた温泉プール)、男女別のロッカー脱衣所、軽食コーナー、売店、マッサージスパが入っています。 入口で入場料を払って脱衣所へ。ここで水着+サンダルに着替えます。温泉プールは、そり立つ崖の間に埋まったような形で、山を見上げる位置にありました。大きなプールの割に、崖に囲まれているのせいか、なんとなく秘湯的な雰囲気が漂っています。温度はぬるめの39℃、ぼーっと長湯するのにちょうどよい、ただ外に出るとちょっと寒い、そんな温度です。また、プール脇にあった小さな温泉ジャグジーは42℃ほどと少し熱め。個人的にはやはりこちらの方が気持ちよかったです。 |
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6: もうひとつの温泉水プール、冷たいので誰も入っておらず。 7: 展示してあった昔の湯治風景は秘湯ムードたっぷり、このままだったら良かったのに! |
プール内は無色透明のぬる湯ですが、施設わきに流れている元の温泉は47℃ほどあるらしく、湯気がもうもうとたっていました。温泉名の通り、ラジウムが多く含まれており、その放射性はカナダ一、そして北米大陸でも最も多く含まれる部類に入るそうです。また他にも、硫黄や炭酸、カルシウムを含んでいます。 そんな薬効を求めて、発見された当初より多くの湯治客がやってくるようで、現在はプールのようになっていますが、それでも源泉が流れ込むポイント(プールの中央や端にある)には、そんなお客さんが自然と集まっていました。 |
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8: ラジウム温泉の南にあって、英国人に開発された似た歴史を持つフェアモント温泉。 9: ラジウム温泉の北東、バンフの町にも素敵な硫黄泉、アッパー温泉があります。 |
日本的な秘湯を期待していくと、予想外にすっきり整備された施設は多少物足りなく感じるかもしれません。私も結局、広々大温泉プールがあったにもかかわらず、横の小さな温泉ジャグジーにずっと浸かっていました。この小さくても十分温かい源泉浴槽がある、という点ではポイント高い施設だと思いました。 ところで、ここは崖に囲まれているので、運がよければ温泉に浸かりながら、崖を上り下りするビッグホーンなど野生動物を見ることが出来るそうです。さすがカナディアンロッキーの温泉です。 湖を見渡せるアインスワースやハルシオン温泉など、クートニー周辺の他施設と比べると、どうも眺望はいまいち(崖に囲まれているので)なラジウム温泉ですが、それが逆に、静かにじっくりと湯に浸かりたい気分の時はぴったりくる気がしました。なにしろカナダ一強いラジウム泉、是非観光途中にその薬効で疲れを癒してみるのもいいかと思います。 <2007.9> |